遊び心って余裕がいる
仕事でも、ゲームでも
直感的で何回やってもおもしろい
そんなゲームをやりたいし作りたい
でらゲーでは、会社からのメッセージなどで度々「おもしろい」「おもしろさ」といったキーワードが出てきます。ではそもそも「おもしろい」とは何でしょうか。でらゲーはゲーム開発を手がける会社ですので、「おもしろいゲーム」とは何かということになりますが、それはどういったものなのか。
正直なところこれは千差万別で、一人ひとりにそれぞれの「おもしろいゲーム」の定義があると思います。僕にとって「おもしろいゲーム」というのは、“繰り返し遊んで楽しい”こと。1回目におもしろいのは当たり前、何度繰り返してもそのおもしろさや楽しさの鮮度が落ちない仕掛け作りが重要だと考えています。それと、チュートリアルがないのも理想です。直感的という言葉でも表せますが、事前情報を入れずとも「なんとなく予測して、触って、試したらできた!」となる方が、より幅広いユーザーに届けることができ、世界に通用するゲームとなりうるからです。
遊び心という言葉をでらゲーはよく使うのですが、遊び心には余裕がいる。“全力で遊ぶ”には、糸がピンと張っていてはダメで、ゲームの中でもそうです。“これをしないと絶対にクリアできないゲーム”はパズルと同じなんですよね。課金するか、時間をかけるか、テクニックを磨くか、道は何パターンも用意されていて、自分ならどう攻めるか考えられる方がおもしろいと思うんですね。
今のゲーム業界はまだまだ過渡期です。一度は据え置き型ゲーム機に統一されかけましたが、PCが進化し、スマートフォンがでてきたことでデバイスが多様化。ゲームもそのプラットフォームをさまざまに変化させており、また収益方法も買い切り、課金、サブスクなど選択肢が増え、現在は戦国時代のまっただなかと言えます。でらゲーはその中で、できるだけ柔軟でいたいと考えています。いつでも自分たちがおもしろいと思えるゲームが出せるよう、活動領域を限定したくないし、固く考えて多様な可能性を見逃したくないんです。
モンストは僕の中のホームラン
けれど、苦労を乗り越え作ったソフトも愛がある
でらゲーで数多くの作品に携わってきましたが、印象深い作品はやはり『モンスターストライク(以下、モンスト)』と『キングダム 乱 -天下統一への道-(以下、キングダム 乱)』でしょうか。『モンスト』は自分の中でも歴代ベストに入るほどユーザーに刺さったゲームで、まさに僕の中のホームラン。海外にも展開され、自分が想定した売り上げを超えたコンテンツになりました。対して『キングダム乱』は難産で。実は、『キングダム』は僕の人生の中で一番好きな漫画で、ゲーム化に掛ける思いは誰よりも強かったんです。けれど、内容のすり合わせが難しかった。ただ、そうやって苦労をのり越えながら作るのが楽しくて。できること、できないことの合間をうまくすりぬけて、原作のファンに驚きと喜びを提供したい、おもしろいものを作りたいっていうのが、ゲーム屋として燃えましたね。
苦労するだけ経験値が上がるのは
どんな仕事でも同じ
仕事をしていて一番自分たちのためになるのは、うまくいかなかったところをどうやってクリアしていったかという経験。会社にも個人にもそれは残るし、仮に退職して違う会社に行ったとしても「あれをここまでがんばった人間です」というところで評価される。また技術力も上がる。苦労すれば苦労するだけ、経験値が上がって何でもできるようになるというのは、どんな職業でも同じではないでしょうか。
今のスタッフたちには優秀な人が多く、僕の考え方をあっさりと越えていくのは、個人的にはとても嬉しいんです。才能があるうえにストイックで、ゲーム作りに自分の人生を全部使う人たちを見て、負けたなと。そんな時がたまらなく気持ちいいですね。
誰にも負けないものがひとつでもあるなら
一緒に仕事がしたい
でらゲーには2種類の人間がいます。すごくゲームが好きで作りたい人と、ヒット作を作りたいという野心のある人。両方持っている人もいますね。ヒット作を作るには相当勉強しないといけないので、そういう前のめりなマインドを持つ人は好きですね。
あとは一つだけで良いので、僕より優れている人と仕事がしたい。「これだったら誰にも負けない」という長所を、みずから表現して欲しいんです。今は難しくとも将来伸びる、というのでも構いません。何かで優勝した、みたいな肩書きは必要なくて、絵でも、プログラミングでも、物理エンジンだけは勝てます!みたいに、枠を限定しても良い。抜きんでたものを持っているということは、そこへのモチベーションが高いということ。それに強みを自覚していると、会社の中でその人は“居場所がある”って自信を持つことができる。僕自身まだまだ学びたいですし、引退するその日までは勉強だと思っています。やりきったと思った時があっても、また明日には状況は変わり、まわりも進化する。自分の記録を常に更新するべく、お互いに刺激し合いたいですね。